「最新の情報」と「成長の罠」

資産運用や投資に取り組んでいると、「新しい」という言葉に出会うことが多いと感じています。

新しい投資戦略とか、最先端の技術に投資をする投資信託だとか、最近のデータによると○○に投資するのがいいとか、何かと新しいものや新しいことを取り入れたいと思うことがあるようです。

でもこれは、投資という行為の性質上、新しいものを追うというのは当然のことなのかもしれません。

なぜなら、すでに多くの人が実践していることよりも、まだ誰もやっていないような分野で勝負をした方のが、大きく勝てるチャンスがあると考えるからです。

株式投資でも、話題になるような驚くほどの高いリターンを上げている銘柄は、最先端の技術を開発した会社や、新しい市場を開拓した会社であることも多いものです。

しかし、たとえそうであったとしても、株式投資で利益を得るためには、常に最先端のことを追い求めなければいけないのかというと、そういうわけではないと考えています。

具体的な例を挙げるなら、投資の神様といわれるウォーレン・バフェットの場合、最先端のビジネスよりも、わかりやすい既存のビジネスを中心に投資をしている、というのはとても有名な話です。

また、ジェレミー・シーゲルが書いた、株式投資の有名な本の『株式投資の未来』によれば、株式投資の長い歴史を振り返ると、時代を代表するような話題の企業に投資をするよりも、高配当で安定したビジネスを行っている企業の株式を選んだ方のが、長期的なリターンが高くなる傾向があると説明しています。

つまり、株式投資にとって「最新の情報」というのは、私たちが思っているほど価値のある情報ではないのかもしれないということです。

これを、ジェレミー・シーゲルは「成長の罠」だと言っています。

私たちが賢い投資家として活動するためには、最新の情報を追うことよりも、もっと投資の本質に近い、原理原則的なところを追及していくことの方が、はるかに大切なことなのではないかと思うのです。

情報を集めても、結局不安になるだけ。

残念なことではありますが、投資をするためにどれだけたくさんの情報を集めても、それがリターンにつながることはほとんどないものです。

たとえば、なんにも考えないで運用しているインデックスファンドの方が、プロがリターンを上げようと必死で運用しているアクティブファンドより成績が良かったりします。また、「株式投資で一番儲かるのは、買ったことを忘れて死んでしまったとき」なんて皮肉な言葉もあったりします。

「新しいもの」、「高度なもの」、という言葉は多くの個人投資家にとっては必要ないものであり、むしろ有害なものとなることさえあります。

私たちが情報だと思っていることのほとんどは、「ノイズ(雑音)」だと考えた方が良かったりする。

私たち人間は、「選択のパラドックス」と呼ばれる認知バイアスを持っています。

選択のパラドックスとは、選択肢が増えれば増えるほど、人はかえって選ぶことが難しくなり、たとえ選んだとしても、後悔しやすくなったり、満足度が低下したりする現象のことを言います。

私たち人は、最善の選択をしたいと考える傾向があり、そのため、いろんな情報を集めてその中から一番いい選択をしようと考えます。

ですが、実際には選択肢が多すぎることで、その情報処理に圧倒されてしまい、意思決定が麻痺してしまうことがあるのだそうです。

「もっとリターンの高い投資先はないだろうか?」、「どこに投資したら、今より儲かるのだろうか?」、「他のみんなは何に投資をしているのだろうか?」、そんな情報を探している間に、「本当にこれでいいのだろうか」と不安になったり、行動を先延ばししてしまったりすることがあるものです。

そしてそうやって情報に振り回されているうちに、投資の原理原則を見失ってしまうこともあります。

私たちは、最近の投資情報より、もっと「投資の原理原則」に意識を向けるべきなのではないかと思うのです。

資産運用と原理原則の関係性

ウォーレンバフェットの格言に、「大きな間違いを避ける限り、投資家がやるべきことはとても少ない。 (As long as you avoid big mistakes, there’s very little an investor has to do.)」という言葉があるように、一般的な投資家は、無駄に知識と情報を広げようとしているのかもしれない。

バフェットが教えるこの投資格言は、「何をするべきか」よりも「何を避けるべきか」が重要であることを示しています。

しかし、残念ながら私たち人は、こういった原理原則というのを、いつの間にか忘れてしまいやすい。特に投資の分野ではその傾向が強いと感じています。

その原因は、私たち人には「欲」という感情があるからです。

運用が上手く行き始めると、「もっと高いリターンが得られるのではないか?」とか「もっといいものがあるのではないか?」といった欲がでてきて、いつの間にか原理原則的なことを忘れて、本来なら避けるべき無駄なことをして『大きな間違い』を冒してしまう。

たぶんこれは、本能的なものなので、頭で考えてどうこうできるものではないのでしょう。

恥ずかしながら私自身似た間違いを冒しているし、ウォーレン・バフェットだって例外じゃない。

『原理原則を守る』という単純な話なのに、それを実行することは、私たちが思っている以上に、とても難しい。

その原理原則を実行できるようになるためには、一体どうしたらいいのだろう。

たぶんそのためには、頭で理解すること以上に、『経験で身に付ける』ということが一番効果的なのではないかと思っています。

原理原則を何度も何度も繰り返しして、意識しなくても体が勝手に動くようになるまで。いわゆるスポーツで教わる『基本』みたいにして学ぶべきものなのではないかと思うのです。

投資の話の中で、理論ではなく『哲学』や『思想』といった言葉が使われる時があるのは、投資には、理屈よりもそういった経験から得られるものの方が大きい、というのがあるからではないかと思うのです。

原理原則に従った資産運用ができるようになるために。

当社で考えている資産運用の原理原則としては、主に2つの視点を考えています。

一つが、『アセットアロケーション』。いわゆる資産配分です。

どの資産にどの程度の割合で投資をするのか、そしてその配分のコントロールはどうやって管理していくのかです。

この考え方は、リスクをコントロールするという点で、とても大きな効果があると考えています。そしてリスクコントロールは、長期にわたって資産運用を続けていくのに、とても大切な考え方だと思っています。

「コントロール下にある損失は、損失じゃない」、そう心から思えるようになるまで経験を積むことが大切だと考えています。

そして二つ目が、『バリュエーション』。これは、投資をする際の明確な基準を持つという事です。

なぜ投資をするのか、なぜその金額で買うのか、そういった明確な基準を持たないことは、長期投資の弊害になると思っております、

資産運用で最も大切なことは何かと問われたら、私は『長期投資』だと思っています。

しかし、「買ったらあとは放置するだけ」という長期投資は、なかなか実現しないことの方が多いもので。ちょっと思った以上の損失が出たりすると、慌てたり、不安になったりして、長期投資をやめてしまうことが多くなります。

本質的な価値を考えて、それに対していくら支払うのかの判断基準である、『バリュエーションという考え方』に注目している背景には、「なぜこれを、この値段で買ったのか」という基準を明確にすることで、その自分の中での価格付けが『明確な基準』となり、長期投資が実践しやすくなるのではないかという目的があります。

投資や資産運用を通した資産形成をサポートする当社の在り方としては、この原理原則を、何度も何度も繰り返しながら、次第に自分の判断で、自然と資産形成ができるようになっていくことだと思っております。

投資と資産運用のマネースクール(講座)で、『⑴アセットアロケーション』と『⑵バリュエーション』の考え方を学び、その後は、『無料相談』や『LINE相談』、『勉強会』などを通じて、それを繰り返し伝えて、自然と実践ができるようになるまでサポートしていく。

ファイナンシャルアドバイザーとして、そのようなサポートができればと思っております。